『波動のマジックボックス -SE-5による分析とバランス-』
(ドン・パリス著)より


私は「未来技術シンポジウム」の混雑した会場を歩いていました。ある展示ブースの人だかりを通り過ぎた時、私は突然気分が安らぐのを感じて驚きました。人混みをかき分けて近寄ってみると、どことなく親近感を覚える一人の男の話に人々が聞き入っているところでした。彼の雰囲気は、何となく私に宇宙人を連想させました。風采はごく普通なのですが、彼の目が独特だったのです。そうです、彼の目から未来が見えたのです。
私は彼の話が聞こえるように、もう少し近づきました。「より高い周波数の波動を取り入れると、体の中により強い共振のパターンが自然と形成されます。これらの周波数がもっと高い状態になり、もっとたくさんのいわゆる生命エネルギーを取り込んだ自然の結果がヒーリングなのです。」
「ヒーリング」、「より多くの生命エネルギー」という言葉が聞こえた途端、私は耳をそば立てました。なぜなら、それこそ、当時の私が必要としているものだったからです。私は心気症こそ患っていませんでしたが、健康上の悩みをかかえていました。子供のころは喘息に、成長してからはあらゆるものへのアレルギーに悩まされました。さらには低血糖症と偏頭痛に苦しめられていて、もう少し生命エネルギーがありさえすれば健康になれるのに、と感じていました。その頃の私ときたら、2気筒のエンジンで動いているようなもので、一日をやり通すのが精一杯という状態でした。ヒーリングなど論外、彼の言う周波数がいったい何なのかもわかりませんでしたが、机の上にある小さな装置と何か関係があるのだろうと推察しました。私は、さらに彼の話に耳をかたむけました。
「その鍵はバランスにあります。」彼は続けました。「バランスをとることによってヒーリングや、生命のほかの部分にもっとたくさんのエネルギーを供給できるようになります。一つ例をあげましょう。出来る限り頭を前に倒してみてください。そのまま力を抜いて、リラックスしてみましょう。いい気持ちでしょう?」
確かにその通りでした。しばらくの間は、いい気持ちでした。けれど、すぐに背中が痛んできました。すると彼が言いました。「今度は後ろに倒してみましょう。」またやってみましたが。今度は最初からいい気持ちどころではありませんでした。背中に鋭い痛みが走りました。三十秒もの間、彼はそのつらい姿勢を続けさせました。それから「はい、けっこうです。前でも後ろでもなく、ちょうどその中間の、完璧にバランスの取れた位置を探してみてください。」首の筋肉で頭をささえるという苦行からたちまち解放されたので、私は彼の言おうとした事を理解しました。
「皆さんの身体全体のシステムにも同じ原理が働いているのです。すべてのバランスが取れ、人生に求めるすべてを可能にするエネルギーに満ちていれば、どれほど気持ちがいいか想像してみてください。だれか試してみたい人はいませんか?」
この頃には、彼の話にすっかり引き込まれていたので、私は手を挙げました。「そちらの若い方、どうぞこちらへ。」と彼は言いました。私には自分が若いとは思えませんでしたが、人混みをかきわけて彼のそばに行きました。彼は「健康上の悩みや気になることはありませんか?」とたずねました。何から説明したらよいのか解りませんでしたが、なんとか声を絞り出して答えました。「背中です。」私はもともと人前に出たり、特に人前で話したりするのが苦手だったので、あまりいい気分ではありませんでした。しかし、彼の態度が安定感を与えてくれて、私も少しづつ平静を取り戻しました。
彼をブースの後ろの白いスクリーンの前に私を立たせ、写真を撮りました。写真がカメラの前部からすべり出してくると、現像がすむまでの間、彼は話を続けました。「写真をとるというのは、あなたの持つ微妙な波動との共鳴によって、フィルムの感光乳剤中の水晶が切り取られるということなのです。これは、テレビのチャンネルのように、同調装置の働きをするわけです。」彼はその写真を、彼の前の、小さなコンピューターの横にある隙間に差し込みました。彼はいくつかのボタンを押すと、片方の手で機械をこすり、同時にもう一方の手でノブを回して同調させているようでした。「もっと話を聞きたい人には後で手順を説明しますよ。……すべて良い調子だ、測定に対する妨害要素はないようだ。」
それから同じような操作を何度か繰り返した後、彼は私の後ろにまわり、尋ねました。「痛むのはここですね?」彼が正確に痛む場所を押した途端、私は天井まで飛び上がりそうになりました。私は大きな声で叫びました。「そこです!」彼は一言「そうでしょうね。」と言っただけでした。そしてまた、機械に戻り、ボタンを押し始めました。しばらくして彼は私に、頭を後ろに倒して背中の様子を見るように言いました。私はゆっくりと頭を後ろにそらせました。すると驚くべき事が起こったのです。背中がカチっという音とともに何かが動くような感じがしたかと思うと痛みが消え去ったのです。「なんてことだ。」私は思いました。「こんな具合になるのは、カイロプラティックを受けた時ぐらいだったのに。」
彼にどれほど背中の調子が良くなったか話してから、私は尋ねました。「その機械のおかげですか?」
「違います。あなた自身の体が治したのですよ。私はただ、あなたの器官に新しい情報を伝えただけです。あとはあなたの身体がやったことです。いいですか、私たちの体は、どんな生命体でもそうですが、もともと健康で活力に満ちているようにプログラムされているのです。体に知性があり、何か問題があればどうやって治せばいいか知っています。一つの種として、私たちは他のものとの区別化や独自性の確立に努めてきました。その結果、全体という概念を、切り捨ててしまったのです。私たちは、自分が何者であるかを知るためにあらゆる物から自分を切り離して成長してきました。あまりにも長い時間をそれに費やしてきたために、私たちの身体は習慣のように反応し始めてしまったのです。私は、あなたの身体はまさにシステムであり、【波動領域を通じて全体性を回復する】ことによってうまく機能するのだということをあなたの身体に思い出させたと言えるでしょう。」
この話は私には難しすぎましたが、その時あまりにもいい気分だったので、そんなことはどうでもよかったのです。ここ何年もそんな気分になったことはありませんでした。感謝と喜びを大いに楽しみながら、私は少しづつ意識を取り戻しました。そして眠っている彼女の隣で私は目を覚ましました。
私は静かに寝返りをうって、夢の日記帳とペンライトを暗闇の中で探しました。夢の中の出来事を覚えている限り記録しようと思ったのです。私はうまく事が運んだので興奮していました。実は、眠りに落ちる前に興味深い技術が学べるような夢を見るように計画をたてておいたのです。
私は、夢の中の教師との最初の出会いの詳細を一つももらさないように、猛烈な勢いでペンを走らせました。思考が混乱してくると、彼女を起こして、私の経験をすべて話して聞かせたいという欲望を抑えなければなりませんでした。やがて、夜の重みに包まれて、私は再びあの会場に戻っていきました。
私は再び、そのブースに立っていました。「先生」は私の気分が昂揚していると同時にまごついているのに気付いているようでした。
「まず最初からはじめましょう。それから、あなたを混乱させている物を整理してみましょう。」彼は続けました。「SE-5というのは、波動エネルギー(Subtle Energy)を扱う装置の5番目のモデル、ということを表します。SE-5とは、波動エネルギーの場のバランスを調和し計測するデジタル装置の5番目のモデルなのです。つまり、ある物が生命の場のバランス調和か影響を及ぼしているかどうかを調査し、その波動の場のバランスを修復する為の情報を送り出す事ができるコンピューターだと言えます。少しばかりチンプンカンプンかもしれませんが。」私はうなずきました。「それでは、順番に説明しましょう。」
彼は少し右を向き、テレビのリモコンのような物を宙に向けました。すると私たち全員の前に3次元のホログラムの文字がぼおっと浮かびあがりました。

時のご来光堂 玉川 準陽
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